防寒具


 基本的に行動中は着ないものである。昔はシュラフにはいるとき、長時間の確保の時以外は着たことのないものであった。

 最近はフリース素材の物が流行しているようである。
 多少かさばるのが難点であるが、吸湿性がなく、軽いので重宝する。出始めの頃は価格が異様に高く、それなら羽毛服の方がずっといいというくらいの物であったが、最近は価格破壊で一着1000円も出せば買えてしまうのだから恐れ入る。

 1000円フリースの弱点は袖口やポケットの作りが簡略化されているところくらいだろうが縫製さえしっかりしている物ならば十分に使用可能だと思う。薄手の物から厚手の物まで種類も増えたので、用途に応じて選ぶことができるのもよい。
 薄手の物ならば、毛シャツに替えてメインの行動着にすることもできる。

 昔ながらの毛のセーターもかさばって重いのが難点だが、暖かくていいと思う。薄手の丸首の物が使いやすいと思う。
 綿のトレーナーは汗によってすぐに湿気を帯びて冷たくなり、防寒具たり得ない。

 羽毛服は軽く、たたむとコンパクトで暖かい。この際もいわゆる羽毛下着で充分。羽毛服の価格もぶち壊れているので、町着用の製品の中から使えそうな物を選ぶとよいだろう。この際、気をつけるところは袖口、裾と首周りの処理である。フードはなくてもよい。

 絶対に使えないのが先にも書いたが綿製品。

 高校時代の山岳部の同期に「スライム」の異名をとるやつがいた。冬の山行で大菩薩にいったときのことである。当時1年であった我々は入部後初めての冬山ということで色々と慣れないことだらけであった。それでも、本などから色々と研究した物である。しかしこのスライム氏、デニムのジャンパー、いわゆるGジャンを着用の上、山行に臨んだのであった。
 積雪は思ったより少なく、ラッセルなどもなく、ヤッケの上衣にスパッツをつけただけで行動したような記憶がある。スライム氏はバランスもあまりよくなく時々滑って転んでいた。
 一日目の行程がつつがなくすみ、幕営となる。設営の時もヤッケなど着ていないスライム氏、体中雪だらけになって奮戦している。日も暮れかかってきて気温が急激に下がってくる。ふと見るとスライム氏の動きがぎこちなくなっている。時間とともにそれは異様さを増し、ロボットの動きのようになってしまった。どうしたのかと思ったら、Gジャンが凍って動くのに異様な体力を使うらしい。普段から面白い彼の動きは更に面白くなり、部員一同の笑いを誘ったのであった。テントを張り終える頃には彼の上半身は動かなくなっていた。テント内が暖まりようやく動きを取り戻した彼はやっとGジャンを脱ぐことができたが、そいつはまるで中にスライム氏の上半身が入っているような姿で固まって天幕中に立っていた。
 笑い話になっているが、一歩間違えば非常に危険なことである。


 馴れないとつい多く持ちがちであるが、耐寒訓練をしてなるべく少なくて済むように努めるべきである。